脳内日記

あることないことなんでも書きます。

焦らず、たゆ・・・

季節は夏。私は絶賛夏休み中である。だれも絶賛などしていないし、当の私も絶賛などしてはいないが。

夏休みと言えば、受験の鬼門である。「夏休みを制するものは受験を制す」という言葉があるように、受験生にとってこの夏休みは今後を左右する大きな山場である。

ちなみにだが、今までとは口調が変わっている。なんとなくだ。なんとなく変えてみたのだ。

私にも遥か昔受験生だった記憶がある。

夏休みを制するものは受験を制す、ということはつまり「夏休みを制せないものは受験を制せない」ということではないか。私は夏休みを恐れ、震えていた。そんな時頼りになったのは、親が買ってきた湯島天神の鉛筆に刻まれたこの言葉である。

「焦らず、たゆまず、怠らず」

たゆまず、がなんなのか、は分からなかったがこの言葉は大いに私を励ました。この言葉を思い出すと狭まっていた視界が拓け、思考が明瞭になった。

「夏休みを制するものは受験を制す」たとえこれが真であっても、逆に「夏休みを制せないものは受験を制せない」が真であるとは限らないじゃないか。

数学受験だった私は日常に必要条件と十分条件を取り入れることで自分の短絡的な思考に矛盾があることを発見した。

こうして焦ることをやめた私は怠ることなく勉強し、たゆまずの意味を知ることなく勉強した。夏が終わる頃には鉛筆が削れに削れ、格言が「焦らず、たゆ」程になっていた。

たゆ・・・なんだったか、意味を知らない私は言葉を忘れた。まあ焦った、が、どうせ意味を知らないのだからと思い出すのをやめた。

この頃受験にことわざ、漢字などの文字が入ったシャツや鉛筆は使用出来ないらしいと聞いた。

普通に焦った。えぇ、こいつと今までやってきたのに、なんなのぉてな具合である。

売れない芸人がやっと仕事取り始めてきた頃に初代のマネージャーが変わってしまうようなものだ。えぇ、こいつと今までやってきたのに、なんなのぉてな具合である。

昨日までカレーはご飯と決まっていたのに、今日からナンに変わってしまうようなものだ。えぇ、ご飯で今までやってきたのに、ナンなのぉてな具合である。違うか。   

ぼっちが修学旅行でグループを作れと言われるようなものだ。えぇ、俺今までぼっちなのに、班なのぉてな具合である。具合が悪い。

受験は落ちた。

理由は分かっている。わたしは焦らず勉強はしたが、急がなかったからだ。焦ると、急ぐはどうやら違う。

急がば回れ」という言葉があるが、私は急がず回っていた。ただの遠回りである。学校の後輩と始めて恋仲になって、家まで5分で着いちゃうから遠回りしちゃおう、をしていただけだ。

何かを達成するためには、急がなければならない。しかし焦ってはいけない。着実に走りながら、力を入れる場所を見極めなければならない。決して歩いていいと言っているわけではないのだ。

努力した者が全て報われるとは限らん。しかし、成功したものは皆すべからく努力しておる。

その努力の最大火力、それを使う場が受験生にとって夏休みであったのだ。

 努力を怠らず、決して気をゆるめず、しかし焦らず力を出すところを見極めよ。おそらくそういったことをあの鉛筆には書いてあったのだ。


焦らず、たゆ


焦らず、たゆ・・・


たゆ、なんだったか。


ナンか、ナンだな。


今日はカレーにナンだ。